恩納村の海岸線をぬけると名護市。

感覚的にはここから山原がスタートする。

この山原という地域は、地図上には存在していない。

古くからの呼び名で、通称であり名護市以北の地域の総称である。

人によって、あるいは住む地域によって、範囲が異なるであろうが、

沖縄県民の心の中にある地図には、必ず存在していて、

空や海にしろ、山にしろ、あるいは家並みや路地にしろ、

思い入れの深い特別な場所なのである。

ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネ、固有の蘭、

サキシマスオウノキなどの貴重な動植物の生息地であり、

世界遺産にも登録されるであろう自然の宝庫である。

道ばたにさえも、沖縄のノスタルジックな空気や時間が流れ、

変わっていってしまうことに、

自分勝手にも残念な気持ちを憶えてしまう。

    逆にいえば、それだけ沖縄本島の中南部からは、

    沖縄という風景やイメージが失われているということで、

    山原を訪れるというコトはだから、ひとつのイヴェントであり、

    原点に触れる小さな旅であったりする。

    国道58号線から県道84号線へ折れて、名護市から本部町へ。

    為又、伊豆味、並里と続く。

    【名護/Nago 本部/Motobu為又/Bimata 伊豆味/Izumi 並里/Namisato】


木々や草花の中を上下左右と縫うように走る山あいの道。

遠くからみるとまるで巨大なブロッコリーのようなイタジイの森。

細かい葉が黄金に色づく相思樹は、爽やかな木漏れ日と涼しげな木陰をつくる。

ジュラ紀や白亜紀の緑を伝えるオオヘゴは、

沖縄が日本とは違うと実感させてくれるのにこれ以上はない説得力を持つ。

沖縄を代表するガジュマル、ハイビスカス、パパイヤ、バナナなどが家々の庭先に植えてある。

少し脇道にそれるゆとりがあるなら、

赤や黄色や、薄紫やらと、

目を奪われるほど色鮮やかな台湾鳳仙花の群や、

さとうきび畑の紫かたばみ、

風になびくセイタカアワダチソウに、

会えるかも知れない。

正月が明けたら、寒緋桜が咲く。堪能するなら桜の名所八重岳に尽きる。

山頂にむかう道沿いの2000本強の桜々。

山の頂きをかりて、天へと伸びる柔らかな曲線。

まるで桃色の帯のようにも見えるその様は

言葉で言い表せないほど。

春の吉野とはまた違う沖縄なりの風情と美しさを見せてくれる。

4月の中旬から夏も盛りまでなら、イジュの木。

香りも艶やかな白い花が咲き誇り、山々に彩りを添える。

夏の始まりはイジュの白い花と艶やかな香りからと言ってもいいほどだ。